人事評価でありがちなアンコンシャス・バイアス(後編)
人事コンサルタント 宮川 淳
前編では、自分で気づかないモノの見方や捉え方の歪みである「アンコンシャス・バイアス」が、人事領域で様々な弊害をもたらすことを示唆しました。後編では、具体的な調査データに触れながら、このバイアスが実際の場面でどのように働くのかを見ていきましょう。
まずは、人事評価におけるアンコンシャス・バイアスです。パーソル総合研究所(※)の調査によれば、最も強いバイアスは「対話頻度」で、対話頻度が多いほどプラスの影響があるとされます。次に強いのは「年齢」で、年齢が高いほど評価にマイナスの影響があります。
注目すべきは、評価判断に影響を与える間接要素全体を100としたときに、「対話頻度」の影響割合が4割超を占めていることです。つまり、部下の視点からすれば、直接的な評価要素以外で評価を上振れさせるには、上司とコミュニケーションをとっていればよい、ということを意味します。
次にマネジメント登用におけるアンコンシャス・バイアスです。最も強いのは「年齢」で年齢が高いほどプラス、と人事評価とは逆の影響になっています。その次は、「出身大学の偏差値」「対話頻度」と続きます。特に「対話頻度」が多いほど、人事評価だけでなくマネジメント登用でもプラスの影響があり、反対に「対話頻度」が少ないほど、ともにマイナスの影響がある、という結果は見逃せません。
昨今、コロナ禍で在宅勤務が急速に進み、平時の働き方としてもテレワークが定着しつつあります。このような環境下では、直接的な対面コミュニケーション機会が激減し、双方向の対話が希薄になるなど多くの企業で課題が浮き彫りになっています。結果として、人事評価においてアンコンシャス・バイアスがより働きやすく、業務上の成果や実績といった直接的な要素と関係がない「対話頻度」によって、評価結果が歪められやすくなっています。
では、これを回避するにはどうすればよいのでしょうか。この調査でもう一つ分かったのは、人事評価におけるアンコンシャス・バイアスは、研修によってある程度克服できるというものです。具体的には管理職研修やダイバーシティ研修受講が、バイアスの影響を下げるという結果が示されています。
これは、公正な人事評価を実現する上では、評価者に対する研修が如何に重要かということを物語っています。制度の中身だけに拘り過ぎて、このあたりの研修が疎かといったケースは多々あります。評価者のアンコンシャス・バイアスを排除するような取り組みができているか、この機会に改めて自社の人事評価を振り返ってみてはいかがでしょうか。
※パーソル総合研究所「マネジメントにおけるアンコンシャス・バイアス測定調査」