チャレンジ意識を生み出すOKRの仕組み
人事コンサルタント 菅谷 明音
弊社では多様なクライアント企業の人事制度プロジェクトをご支援していますが、その中で目指す人事制度のキーワードの一つとして必ずと言ってもよいほど上がってくるのが、「チャレンジ意識の醸成」です。
比較的自由で新たなチャレンジがしやすい環境であるにもかかわらず、チャレンジ精神が乏しく積極性がないという声は経営層へのインタビューでもよく聞かれます。
日々の目の前の業務を毎日こなし、その場その場で問題が発生したら対応することで精いっぱいになっている、
多くの企業で導入されているMBO(目標管理制度)が評価・報酬と結びついているため低い目標値に安住してしまい、チャレンジングな取り組みへの内発的動機付けができない、
組織風土そのものが保守的である・・・、
チャレンジする意識が持てない、あるいはチャレンジしたいと思っていてもその行動が阻害される背景としてこのようなケースが多いのではないでしょうか。
新たなチャレンジを促すためには、そのためのモチベーションを高めることが必要になります。
トップの方針として様々な媒体や場で発信することや、人事評価においてウェイト設定や加点によって評価に繋げることもその一つであり、これらは外発的な動機付けと言えます。
一方、内発的なチャレンジ意識を高めていくことを手助けする方法の一つとして、OKRのフレームを使用することが考えられます。
OKRは目標管理手法の一つとして位置づけられることが多いですが、組織開発(OD)やチームマネジメントの手法に近いところがあります。詳細な仕組みの解説はここでは割愛しますが、なぜOKRが内発的動機付けを起こせるのかに焦点を当て特徴を記載します。
1.四半期等の短期スパンで、チーム毎に最も重要な課題にフォーカスし、アグレッシブでワクワクする定性的な目標(Objective)とこれを達成するための定量的な成果(Key Result)をセットで設定します。
2.チームのOKRはメンバー全員で議論を重ねて決定し、一人ひとりの意思をチームの共通目的に昇華させていくことが重要です。
3.上司とメンバーは評価者と被評価者という関係性を排除した仲間として高い目標に対峙し、フラットな議論を行います。
4.進捗や情報をリアルタイムで共有し、週次や月次の周期でレビューや軌道修正を行いながら最短での解決・達成を目指します。
5.高レベルの目標へのチャレンジの前提として、求められる達成度は60~70%程度とし、その達成度判定と報酬決定は切り離して運用することが原則です。
「組織の共通目的(Objective)を深く理解し、共感し、自分事として内発的に捉えること」ができ、その達成状態の基準(Key Result)が明確で、進捗や成果をチームで共有・承認し合い、そしてまた次のクールで高い目標にコミットしていくというサイクルができれば、自然と高い目標に向かう行動が生まれます。これはOKRの仕組みそのものが、内発的行動を起こす好循環サイクルの醸成に寄与するものだと言ってもいいでしょう。
もちろんそのためには、運用を形骸化させず密度を保つことが肝要です。
本稿ではOKRの仕組みが個人のチャレンジ意識を醸成する手助けになるという点にフォーカスしましたが、OKR本来の組織的な展開、そしてMBOとどう組み合わせるのかについてはまた別の機会に触れたいと思います。