コンサルタントコラム

同一労働同一賃金と無期転換の矛盾


シニア人事コンサルタント 宮川 淳

同一労働同一賃金の「同一」であるか否かは、「誰と誰を比較するのか」皆さんはきちんと説明できますか。大抵の人は「正社員」と「非正規社員」と答えるかもしれません。果たしてそれは正しいのでしょうか。今回のコラムでは同一労働同一賃金と無期転換者の関係について、解説します。

そもそも「正社員」「非正規社員」というのは法律用語ではなく、普遍的な定義が存在するわけではありません。同一労働同一賃金法制を正しく解釈するなら、「無期フルタイム」と「それ以外」と区分するのが妥当です。とはいえ、一般に正社員は無期フルタイムであることが多いため、典型的には正社員と非正規社員という構図になってしまうのです。
(最近では、「短時間正社員」制度も普及しており、正社員だから無期フルタイムとは言えなくなっています)

ここで問題となるのが、無期フルタイム(多くは正社員)同士の待遇格差です。実は今回の法改正では、この格差は問題視されていません。つまり、日本における同一労働同一賃金問題は、(少なくとも現時点では)法制度的に無期フルタイム以外の保護に主眼が置かれていることになります。

ややこしいのが、2018年4月から出現することになった、有期労働契約で通算5年以上の者が無期転換した(以下、無期転換者)ケースです。例えば、もともと有期フルタイムであった契約社員が無期転換した場合、法的には契約期間のみを無期化すればいいわけですから、待遇は(正社員より劣る)契約社員のまま、ということが多いはずです。ところが、転換後は無期フルタイムという身分になるため、同一労働同一賃金法制の下では無期転換者は保護対象外となります。

結果として、無期転換しなかった(有期)契約社員の待遇が正社員に近づき、無期転換は従前の契約社員の待遇のまま(ということは、相対的に無期転換者の待遇が最も低い)、という逆転現象が起こり得るのです。理屈の上ではそれも許容されるのでしょうが、全体的な人事管理という面ではアンバランスが否めません。

同一労働同一賃金の問題を考えるにあたっては、このように無期転換者も念頭において対応に取り組む必要があると言えるでしょう。

執筆者紹介

シニア人事コンサルタント

宮川 淳 みやかわ あつし

人事制度設計から、労務監査等の人事コンサルティングをメインに活動。制度設計だけでなく、実務に根ざした現場レベルでの運用アドバイスを行っている。

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