新常態における評価の在り方を議論する前に
シニアマネジャー 矢田 瑛
コロナ禍を契機として一気に普及が進んだテレワーク。当初は短期間の一時的な対策として導入した企業も、実績の裏付けと新常態(ニューノーマル)への対応のために、恒常的な制度として導入するケースが非常に増えてきています。
そうすると、これまでは一時的な対応であったがために目をつぶってきたような部分も対応を迫られることになりますが、その代表格としては評価制度があげられます。
“テレワーク”と“評価”というワードがでてくると、必ずといって聞こえてくるのは、「働いている姿が視えないから評価しにくい」、「成果をもっと重視すべきだ」などといった声です。
なお、昨今話題の“ジョブ型雇用”については、メディアを中心に今の日本企業における万能薬のようなものとして御輿を担がれている印象を受けます。本稿では深く言及しませんが、ここでは決して万能薬ではないということだけ言っておきます(ある企業にとっては特効薬にもなり得ますが、反対に劇薬にもなり得ます)。
ジョブ型の名付け親で第一人者でもある濱口桂一郎氏(労働政策研究・研修機構労働政策研究所長)も、ジョブ型雇用を巡る昨今の誤解に対してはメディアやブログ等で警鐘を鳴らしています。
さて、話しを本題に戻しますが、当職が本稿で警鐘を鳴らしたい部分は「働いている姿が視えないから評価しにくい」という点です。そのように思われている方に是非聞かせてください。
「会社にいるときは部下が日々何をやっているのか常に把握していましたか?」
おそらく答えは「NO」でしょう。
“視えない=評価できない”ではなく、どのような状況下であれ“視ようとする”ことが評価者には必要です。
つまりは、評価者のマネジメント意識の問題であり、在社時に何かを視ていたわけでもなく、これまで誤魔化してきたものが露見したに過ぎないのではないでしょうか。
もちろん評価の要素として、以下のような評価を重視する傾向が強ければ評価しにくい場面もあるかもしれません。ただ、これも“視ようとする”ことで十分に評価をすることは可能です。
1)情意評価
例えば、協調性や積極性といった要素であれば、メール・チャット等による日常的な対応やメンバー同士のWeb会議上でのやり取りなど、離れているからこそ客観的な事実が可視化されやすい部分も多くあります。そのような機会がなければ、意図的に場を設けたり、ツールを活用してみてもよいでしょう。
2)プロセス評価
日々の予実管理や定期的な1on1ミーティングなどを通して、目標や課題の認識を共有し、その進捗を確認し合うことで、プロセスもまた可視化できます。評価者個人に任せずに、会社としてテレワークと親和性の高い目標管理手法(MBOやOKR)の導入または見直しを検討してみてもよいでしょう。
今では様々なツールがあるため、いずれも絶対にできないということはないはずです。どうしたら公正な評価ができるかという発想で考えていくべきで、これなくしてはどのような制度を導入しても会社が期待する効果は得られないでしょう。
その意味で、テレワークという潮流は、本来あるべき評価者としての役割を再認識させる絶好の機会であり、それと同時に評価者にとっては適正・力量が試される最大の試験であるのかもしれません。