ハラスメントをなくすために本当に必要なこと
シニアマネジャー 矢田 瑛
皆様の会社では、効果的なハラスメント研修を実施できていますか?
実施できていない会社にその理由を聞いてみると、「知識を伝えても理解してくれるとは思えない、人の価値観や常識は簡単に変えられない」といったお悩みの声をよく聞きます。
要するに、決してハラスメントに関心がないわけでも、うちでは起こらないと高を括っているわけでもなく、どこか諦めに近い状況にあるわけです。
そのような状況の中で、あれやったらセクハラ、これやったらパワハラと言っても、知識としては伝えることができるでしょうが、ハラスメントを本当の意味でなくすことはできません。断言できます。
なぜなら、自分の価値観や常識と違うから。その違いに納得もしていないからです。
もう少し噛み砕いて言えば、自分がこれまで培ってきた仕事のやり方、人との関わり方などの成功体験が根っこにあり、それを否定するものを受け容れられず、ちゃんと腹落ちしていないためです。
そうすると、「であれば価値観や常識は簡単に変えられないから意味ないじゃないか」と思われるかもしれませんが、そうはなりません。それはなぜか?
“変える必要はない“からです。
上記のような話しは、典型的なアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)が働いているといえます。
つまり、必要なのは自分の価値観・常識を変えることではなく、自分の価値観・常識が絶対ではないこと、当たり前ではないことを知ること、そして自分とは異なる考え(多様性)を受け容れることです。
価値観や常識は何が正解で何が不正解という話しではありません。時代や社会の変化によって、今後も「常識」は変わり続けていきます。
昔を否定するわけではなく、昔はそれが常識だったのでそれで良かったわけです。
ただ、今には今の常識がありますので、ハラスメントの問題に限らず、昔はこうだったといった不毛な話しは止めて、人の多様性を理解することが必要です。
このような根っこの部分をしっかりカリキュラムに組み込んだ上で、ハラスメント研修を是非行ってみてください。
そうして築かれたハラスメントのない職場がもたらすものは、マイナス(リスク)をゼロにする変化だけではありません。
ハラスメントがないことによる心理的な安心は、社員の積極的なアクションを生み出し、会社のプラスにも繋がってくるはずです。