賃上げと生産性向上の好循環をHRから創造する
人事コンサルタント 星野 陽子
物価上昇に歯止めがかからない中、岸田文雄総理大臣は、新しい資本主義の実現に向けた構造的な賃上げに最優先で取り組む考えを強調しています。
そして、連合は「2023春季生活闘争基本構想」において、「賃上げ分を3%程度、定昇相当分(賃金カーブ維持相当分)を含む賃上げを5%程度」とする賃上げの指標を示しました。
また、東京商工リサーチによる『2023年度「賃上げに関するアンケート」調査』では、2023年度に賃上げ実施を予定する企業は81.6%という結果が示されています。
実際に、このところ、クライアント企業様との会話の中でも賃上げに関する話題が頻繁に出ています。
広く国民の間でも、2023年度は賃上げが実施されると期待されているように感じられますが、果たして、短期的・一時的な賃上げが国民の生活を真に救うのかというと、そのような単純な問題ではないはずです。
経済学に明るいわけではありませんが、物価対策として賃上げが必要だということには、おそらくそうであろうと考えるものの、賃上げをしても、企業がその人件費の増加分を商品価格に転嫁してしまっては、さらなる物価上昇を呼び起こしてしまうでしょう。
これを回避するには、単に賃上げを実施するのではなく、生産性を向上させ賃上げをするという持続的なフレームを築いていかなければなりません。
生産性の向上のためには、設備導入やDXへの取り組み、リスキリングなどがイメージされますが、どのような方法を選択するにしても、生産性向上のための施策を企業が具体的に描かなければなりません。
そして、これは、長時間労働の是正などにも繋がる可能性が高く、やはりこの視点でも人事部に求められるものは、今や単なる人材採用や労務管理ではなくなったと言えるのではないでしょうか。
自社の経営戦略の実現に向けて、人的マネジメントを行っていく戦略的人的資源管理が求められているのです。