「働きがい」のある組織づくりを
シニアマネジャー 矢田 瑛
時間外労働の上限規制や年次有給休暇の取得義務化などの「働き方改革」がスタートしたのが2019年。そこから早いもので5年が経ちました。
その間では、コロナ禍によるテレワークの急速的な普及も相まって、多くの企業において働き方の変化を迫られた5年間だったのではないかと思います。
そうした変化・改革を進めてきた中でありながら、次のような状況に直面しているようなことはないでしょうか。
〇以前よりも離職は減ったが、将来を期待していた社員が辞めていく
〇働きやすい環境になったはずなのに、社員の満足感が感じられない
こうした状態は、もしかしたら「働きやすさ」の改善に偏重し、「やりがい」が満たされない組織になっているからかもしれません。
アメリカの臨床心理学者であるハーズバーグが提唱した“二要因理論”というものがあります。これは、人間の仕事における満足と不満足の要因は別のものであり、分けて考えるべきという理論です。
満足に関わる要因を「動機付け要因」、不満足に関わる要因を「衛生要因」として以下のように整理されます。
〇動機付け要因:仕事の達成感・承認機会、自己成長環境、仕事内容、貢献実感 など
〇衛生要因:会社の方針・管理監督方法、働き方・労働条件、作業環境、対人関係 など
動機付け要因が満たされるほど、仕事に対する満足度は高まりますが、欠けているからといって直ちに不満足につながるものではありません。
一方、衛生要因が欠けていると仕事に対する不満足が高まりますが、満たされたからといって仕事の満足度につながるものではありません。
仕事において、動機付け要因はやる気を促進するエンジンであり、衛生要因は安定のための土台といえます。この2つは、相互補完の関係にあり、どちらか一方に偏った組織は、バランスを欠いた状態といえます。
言い換えれば、前者が「やりがい(攻め・挑戦)」、後者が「働きやすさ(守り・安心)」であり、双方が満たされてはじめて「働きがい」に繋がるといえるでしょう。
会社の取組みが働きやすさの方の施策に偏重し過ぎると、仕事への満足・やりがいを求める社員の離職につながり、結果としてぬるま湯のような組織に陥る危険性があります。
さて、皆さまの会社ではいかがでしょうか。現状の取組み施策をあらためて洗い出しながら、どちらにどのくらい分布されるか是非マッピングをしてみてください。
結果、一方に不足や過度な偏りがみられた場合には、それが対処すべき問題の本質かもしれません。
これまでの「働き方改革」から「働きがい改革」にシフトチェンジしていきましょう。