調査データから考察するWithコロナ下の雇用調整とテレワーク
人事コンサルタント 宮川 淳
新型コロナウィルスの新規感染者数は、都市部を中心に緊急事態宣言後の最多を連日更新しており、第2波の懸念が高まっています。Withコロナ下において経済活動との両立をどう図るかが政策的な課題になっていますが、これまでの緊急事態宣言下による経済活動の縮小は、企業経営に甚大な影響を及ぼすことになりました。
そのような中、独立行政法人労働政策研究・研修機構(以下、JIL)が、2月から5月にかけての雇用・就労への影響等に関する調査分析が先日公表されました。この結果からは、今後予測される雇用調整の動きや新常態(ニューノーマル)に備えた雇用の在り方が浮かび上がってきます。
以下では、本データを参照しつつ、企業人事における今後の課題を俯瞰してみたいと思います。
1)リストラが本格化するのは、おそらく半年から2年先になる
7割超が売上額等の減少を余儀なくされるも、5月段階での解雇・雇止めの実施割合はそれぞれ0.4%に留まり、大半は残業削減や一時休業で凌いでいる傾向が見受けられます。その一方で人件費の削減割合は3割程度以内と、売上額等の減少より小さくなっています。結果的に、この局面では人員削減は回避できたものの、構造的にはギリギリの状況であったことが窺えます。
元の業績に回復するのに、「半年から1年」あるいは「1年から2年」と見込んでいる企業が合わせて約5割ということを考えると、Withコロナ下の経営は長期戦の様相を呈しています。仮に、この間に第2波・第3波が到来し、自粛ムードで需要が減退もしくは緊急事態宣言が再発出される事態になれば、一気に本格的なリストラが押し寄せることが十分考えられます。したがって、人事としては、常に人員削減のシナリオを想定して、前もって準備しておくことが不可避であると言えます。
2)テレワークの敷居は下がったが、効果を生み出すのはこれから
今後の人材マネジメントの方向性では、「業務の効率化」「教育訓練・能力開発」が、それぞれ4割を超え、人手不足を意識してか、人材の質を高め、生産性を高めることで余剰人員を抑えようとする意向が見られます。とりわけ、在宅勤務については職場勤務に戻すが4.3%に対して、活用を本格化が22.7%と大差がついており、ニューノーマルな働き方としてテレワークの定着が課題になっています。
今回、臨時的に在宅勤務を試行導入した企業の多くは、インフラや就業ルール、あるいは評価の仕組みなどが熟慮されておらず、改善の余地が残されているはずです。導入効果を最大化するためにも、自社の実態に即した制度にチューニングしていくことが今後の課題と言えるでしょう。