できる管理職は「言葉」だけに頼らない?
シニアマネジャー 矢田 瑛
お客様のコンサルティングをさせていただく中で、評価者向けの研修やハラスメントなどの研修をする機会も多くあります。
その際に、管理職の皆様に対して、どのようなことを意識して評価面談や業務指導に臨んでいますか?と聞くと、主に以下のような回答が返ってきます。
・モチベーションを損なわないように言葉選びに注意している
・正しく伝わるように抜け漏れなく伝えるようにしている
・うまくストーリーを組み立てて話すようにしている
・ハラスメントに繋がらないように言葉に気をつけている
よく見ると、いずれもどのような言葉やストーリーで伝えるかということを重要視しているということがわかりますでしょうか。
もちろんすべてが必要なことですが、正しい言葉や綺麗なストーリーで伝えさえすれば、部下に正しく伝わるかというと決してそうではありません。
なぜなら、部下が上司と対話をする中で見聞きしているものは、“言語”だけではないからです。
「メラビアンの法則」といったものを聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
これは、1971年に心理学者であるアルバート・メラビアンが提唱した概念で”感情や気持ちを伝えるコミュニケーションをとる際、どんな情報に基づいて印象が決定されるのか”を検証したものです。
この検証結果によれば、言語・聴覚・視覚の3つの情報のうち、印象を決める要素の割合は以下とされています。
上記のように、言語情報は全体のたった7%しかなく、多くは聴覚情報と視覚情報が占めていることがお分かりになるかと思います。
つまりは、いかに正確な言葉で綺麗なストーリーを組み立てて話しをしたとしても、表情や口調が伴っていなければ相手には伝わり切らないということです。
ただ、この結果をもって、言語よりも非言語(聴覚・視覚情報)のほうが重要であると考えてしまってはいけません。
伝える言葉や内容がしっかりしていてはじめて、非言語部分の伝達力が増すということに過ぎないからです。
適切な言葉を用いても、机を叩きながら怒鳴り声で恫喝してはパワハラになり得ますし、笑顔でやさしい口調で話している言葉がセクハラ発言であってはいけません。
また、優れた評価結果を手元の資料ばかりを見て棒読みで伝えても相手の意欲は湧きませんし、相手に寄り添って温かくフィードバックをしても中身のない上辺だけの言葉では誰もついてはきてくれません。
昨今はテレワークの普及により、リモート環境でのコミュニケーションが増える中で、非言語情報を伝える機会も減ってきています。
このような環境下で、管理職と部下のコミュニケーションに不安があるようであれば、言語だけでも非言語だけでもなく、言語情報(Verbal)、聴覚情報(Vocal)、視覚情報(Visual)の「3V」を強く意識するように促してみてはいかがでしょうか。