いま注目されている「週休3日制」の正体
シニアマネジャー 矢田 瑛
「週休3日制」を導入する企業がちらほらと現れてきましたが、その仕組みは企業によって様々です。
そこで、本コラムでは週休3日制とは一体何者で、どのような実務課題を孕むのかを考察していきます。
まず本題にはいる前に、休日数を巡る時代の変遷をおさえておきましょう。
現代では一般的な週休2日制も、昭和の時代は週休1日が大半でした。週休2日制を今日に至るまでに普及させたきっかけとなったのが1994年に施行された改正労働基準法であり、法定労働時間が週48時間から週40時間に短縮されたことが大きな推進力となりました。
つまり、法律を守るべく、多くの企業が週休2日制にシフトしてきたわけです。
それでは、今般の週休3日制はどうでしょうか。
政府の現時点での提言内容は、リカレント教育(学び直し)を筆頭に、育児・介護との両立支援や兼業等の働き方の多様性を主目的として挙げています。また「選択的」週休3日制として、希望者に対する選択肢という位置付けに留めてもいます。
要するに、週休2日制の時とは背景も目的も異なっているので、その延長線で議論することはナンセンスということです。
さて、前置きが長くなりましたが、週休3日制の導入タイプを「給与」と「労働時間」の2つの側面から大別してみると、次の3つに整理・集約できます。
① 休日純増タイプ
文字どおり週休日数を1日増やしながらも、給与は据え置くケースです。実労働時間が従前と変わらないままであると、残業代コストが急増するため、労働時間の削減(生産性向上)なくしては現実的でないタイプといえます。
② 給与減額タイプ
勤務日数(労働時間)を減らした分、給与も同程度減らすケースです(≒短時間正社員)。収入面での不安は生じますが、育児・介護といった家庭の事情がある方や兼業などのダブルワークを志向する方にとっては魅力的であるかもしれません。ただ、明らかな不利益変更となるため、本人の同意なく適用することは難しいタイプでもあります。
③ 変形労働時間タイプ
勤務日数は減らしつつ、その分勤務日の労働時間を増やすケースです(≒変形労働時間制)。週の労働時間は維持されることになりますので、給与もまた現状維持となります。リカレント教育という意味ではプラスに働く可能性はありますが、出勤時間が早まる、または帰宅時間が遅くなることで家庭への影響は決して小さくないでしょう。
また、隠れた問題として、例えば週5日勤務・1日8時間を週4日勤務・1日10時間とした場合、以下の点にも注意が必要となります。
・時短勤務者のインパクト
例えば保育園等の事情から1日6hとしたい場合、給与が3/4(8h→6h)から3/5(10h→6h)になります。そのため、育児や介護を抱える方のニーズに沿っているかは疑問が残ります。
・年次有給休暇のインパクト
勤務日数が減っても付与日数は変わらず、また1日分で10時間の勤務が免除されますので、目に見えづらいところでコストや不公平感を生むことが想定されます。また、休日が増えることで年休の取得率が低下する可能性もあるでしょう。
生産性の向上や働き方の多様化といった潮流にある現代において、「週休3日制」は一つの波になるかもしれません。ただ、推進力としてどこまでの役割を担ってくるかはまだまだ未知数です。
週休2日制の時には、パソコンの普及やインターネットの商用化などの技術革新が生産性向上に寄与しましたが、現代ではどうでしょうか。
現代においてその役目を果たすものは、AI・RPAなどによる自動化・DX推進、あるいはテレワークやオンライン会議の活用にあるのかもしれません。