管理職になりたがらない人は本当に増えているのか
シニアマネジャー 矢田 瑛
「将来管理職になりたいと答えた人の割合“53.3%”」
あなたはこれがどこの国の調査結果だと思いますか?
これは、学校法人産業能率大学総合研究所が、同学開催の新入社員研修の受講者(≒新卒社員)に対して行った「2022年度新入社員の会社生活調査」の結果です。もちろん、日本における調査です。
企業の経営者・人事担当者と会話をしていると「最近の若い人は管理職になりたがらない」といった声をよく聞きます。
確かに、働き方という意味では、若い世代を中心にワークライフバランスを重視する傾向が高まってきていることは事実だと思います。
ただ、上記の調査は毎年実施されており、2000年度は23.7%に過ぎなかったものが、年によっての浮き沈みはありながらも増加傾向を辿ってきた結果、2022年度には上記数値に至っています。
そのため、本調査結果によれば「将来管理職になりたい人」は昔よりも増えているといえることになります。
それでは企業側の肌感覚が誤っているのでしょうか?私にはそうは思えません。ではどういうことなのか。
つまるところ、入社時には管理職になりたかったが“入社後になりたくなくなっている”ということが真実ではないでしょうか。
それは、単に管理職の責任や負荷の大きさを目の当たりにした結果かもしれませんし、それに比べた魅力のある対価(報酬やステータス)になっていないといった理由からかもしれません。
あるいは、直属の上司がつまらなそうに仕事をする姿や尊敬できない言動を見聞きして「あのようにはなりたくないな」といった悪い変化が起こっているようなケースもあるのかもしれません。
いずれにしても、「管理職になりたがる人が少ない」「任せられる後継者がいない」と他責で嘆くのではなく、管理職は部下が目指したくなる管理職の姿をまず見せるべきであり、会社はそのような管理職を後押しし、社員が魅力を感じるような管理職制度を構築することが不可欠であるといえます。
誰もが管理職になれる能力・素養を持っているわけではありません。
その限られた人に管理職を目指してもらえないのは、会社にとって非常に大きな損失です。
もし「管理職になりたがる人が少ない」といった悩みを抱えているようでしたら、まずは社内アンケートなどで社員の声を聴いてみることからスタートしてみてはいかがでしょうか。
良好な労使関係は“傾聴”から生まれるものです。