人権侵害が自社で起こっている?人事部が知るべき「ビジネスと人権」
人事コンサルタント 星野 陽子
近年、国際的に企業の人権尊重を促す政策が講じられており、企業には、その事業規模を問わず、取引先を含めた人権尊重の状況について、リスクを特定し、これを解消するための実効的な取り組みを進めていくことが求められています。
我が国においても、「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」が策定され、また、公共調達の判断材料の一部に企業の人権対応を含めるとされています。
ところが、「ビジネスと人権」については、「人権」というワードが与える印象からか、人事部の業務と関わりが薄い、海外企業との取引を行っていないので自社には関係ないと捉えてしまう方もいるようです。
しかし、企業にとって最も身近な人権は、その雇用する従業員の人権です。
つまり、すべての企業がその従業員の人権について考えなければならず、「ビジネスと人権」で求められていることは、まさに人事部の業務と直結しているのです。
例えば、長時間労働による過労死、就職活動や職場におけるセクハラやパワハラなどのハラスメントは、典型的な人権問題ですが、このような人権問題が自社やそのサプライチェーンで起こり、ひとたびメディア等で取り上げられれば、会社の信用やブランドは大きく毀損されてしまうでしょう。
では、「ビジネスと人権」に企業がどのように取り組んでいくべきかと言えば、まず、人権デューデリジェンスを進めることが考えられますが、そのプロセスは以下のとおりであり、これらを継続的に取り組んでいくことが求められます。
① 人権方針の策定
② 人権リスクの特定
③ ②にて特定された人権リスクの軽減・防止
④ ③の取り組み効果のモニタリング
⑤ 一連の取り組みの開示
人権デューデリジェンスについては、国内ではまだ取組みが進んでいない企業が多いように見受けられますが、企業とその人事部には「ビジネスと人権」に関する透明性を高め、継続的な改善を促すことが求められており、人権デューデリジェンスの実践が求められているのです。