人事施策は「浸透」から逆算する
シニアマネジャー 矢田 瑛
良い人事施策とは一体何でしょうか?
現場に寄り添ったもの、経営の想いが込められたもの、ロジカルで合理的なもの、ユニークで革新的なもの。
目的の数だけ様々あると思いますし、どれか1つというものでもありません。
ただ、共通して言えることは、中身がどんなに優れていても、社員が「理解」できなければ意味がないということです。
また、「理解」はできても「共感」を得られなければハレーションを生むでしょうし、「共感」はできても「浸透」していかなければ一過性のもので終わり目的を果たしきれません。
つまり、“理解→共感→浸透”この流れをいかに描くかが重要といえます。
例えば、人事制度を見直していく場面において、人事部や限られた経営層のみで1から10まで決めたものが、果たして現場の「共感」を得て、「浸透」に繋がっていくでしょうか。
トップが現場を深く理解していて、カリスマ性と強いリーダーシップを持つ企業はそれでも良いでしょうし、その方が良い場面も少なくないかもしれません。
ただ、そうでもなければ「浸透」に繋がるためにはどうすべきかという発想で、プロジェクトの進め方を“逆算”して考えることが肝要です。
一例をあげますと、
・現場へのアンケートやインタビューなど声を吸い上げる機会をつくる
・見直しの方向感について要所要所で現場の意見を聴取する
・プロジェクトチームにキーマンを参画させて深く巻き込んでいく
こうしたプロセスを通して創り上げられたものは、そうではない場合と比べて「共感」を得やすく、巻き込んだメンバーを通じて「浸透」に繋がりやすいものになってくるはずです。
とは言いながらも、事後的に浸透策を講じる術も多くあるわけですし、どちらが正解ということでもありません。
いずれにせよ、何か物事を決めることをゴールにおかず、それが浸透した状態をゴールにおく。そして、そのためのプロセスを構築することが大切です。
また、上記のようなことはチームのマネジメントをする際にも同じことがいえます。
短期的にみれば、マネジャーやリーダーが自分だけで決めて指示をし、メンバーに動いてもらう方が簡単です。
ただ、検討段階でメンバーを巻き込み、共に創り上げていく。そうして決まったものはメンバーを強く動かしていくものになり、この過程こそが働きがいや次世代のリーダーが育っていくことにも繋がってくるように思います。