人事部門はコストセンターにあらず
シニアマネジャー 矢田 瑛
「プロフィットセンター(利益を生み出す部門)」の対になる概念として、「コストセンター(利益を生まない部門≒コストとなる部門)」という用語が使わることがあります。
多くの場合、総務部や人事部、経理部といったような、いわゆるバックオフィス・間接部門などを指して用いられることが少なくありません。
確かに売上を生みだす部門は、営業や現場などのフロント・直接部門ではありますが、ひとりで生み出せる成果はせいぜい2人分、つまり1を2にすること(+1を生むこと)が限界です。
あるいは、組織力・効果的なマネジメントによって、例えば10名の部下に120%のポジティブな影響をもたらせたとすれば、マネジメント1人で10を12にすること(+2を生むこと)はできるかもしれません。
そのように考えてみたときに、人事部門としては何をもたらすことができるのか。その前提として、まずは人事部門の役割・機能を考えなければなりません。
これについて、ミシガン大学のデイビッド・ウルリッチ氏は著書「MBAの人材戦略」の中で人事部が担うべき機能を以下の4つに分類しています。
(下図は同書をもとに弊社にて作成)
こちらに照らしたときに、上記③の機能に終始しているとすれば、それこそが人事部門がコストセンターと言われてしまう所以でしょう。
他方で、③以外の機能もすべからく果たしているとすれば、社員全体にプラスの影響をもたらすことができる力を秘めているといえます。
それが仮に110%とすると、100名いれば110にできる、つまり+10を生むことができることになります。
(もちろん反対にマイナスも生む可能性も孕んではいますが)
故に、人事部は決してコストセンターではなく、全社的な成果を最も生み出す可能性を秘めているプロフィットセンターであるといっても過言ではないはずです。
もしそうでなければそこを目指していくべきであり、それがまさに人的資本経営に直結してくるのではないでしょうか。
「管理の人事」(守り)から「戦略人事」(攻め)へ
我々コンサルタントもまた、企業と共に考え、伴走していく存在でありたいと強く思います。